リトグラフの価値

木版画や銅版画は聞いて想像がつく人も多いと思いますが、リトグラフというとあまりピンとこないという人が多いのではないでしょうか。
リトグラフの「リト」とは石、つまりこれは、簡単に言うと石版画です。
ただ、木版画のように彫ったり、銅版画のように削るのとは違います。
水と油の反発作用を利用して絵具を付着させ、化学反応によって紙にインクをのせていくものなのです。
まずこの技法のメリットとしては、版の上にそのまま描くため、作家が描いたタッチや筆運びをありのまま楽しむことができる点があげられます。
発明された19世紀当初は、ミシャやロートレックなど多くの画家や広告デザイナーたちが、ポスターなどを製作するのにこの手法を好んで利用していました。
現在は、使い勝手の面から重く扱いが難しい石に代わり、アルミや亜鉛などの金属版を利用して作品がつくられていることが多いようです。
こうして版画の技術を知ると、簡単に量産できる複製画よりも、作家の息づかいが直接感じられるリトグラフの良さが一層大きく感じられるのではないでしょうか。